学生向け金融セミナー 知っておきたい金融の基礎知識 第5回

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皆さん、こんにちは!株式会社WealthLead(ウェルスリード)の濵島です。みなさんは、「円高」や「円安」、「為替リスク」、「為替差益」、「為替差損」といった言葉をお聞きになったことがあるでしょうか。今回は、資産形成や投資の際に必須の知識となる「外国為替」についての基本を押さえておきましょう。

そもそも「為替」とは何でしょうか。辞書を引くと、「現金を送る代わりに手形・小切手・証書などで金銭の受け渡しを済ませる方法。また、その手形などの総称。」とあります。

為替は、日本においては江戸時代の大阪を中心に発達しました。例えば、江戸の商人が大坂の商人に代金を支払う場合、多額の現金を運んだのでは途中で盗難などの危険が伴います。そこで、江戸の商人は両替商に代金を渡して為替手形(支払いを依頼した証書)を発行してもらい、その手形を受取った大坂の商人が指定の両替商に持って行き代金を受取りました。つまり為替とは、売買代金の受払いや資金の移動において現金を輸送することなく行う手段であるのです。

国境を越えて異なる通貨間で行われるのが外国為替取引です。異なる通貨間で商品やサービス、投資した代金等の決済をするのには、決済する通貨を決め、その通貨に交換する必要があります。このときの交換レートが「外国為替レート(為替レート)」です。

為替レートは外国為替市場で決定されていますが、外国為替市場は、東京証券取引所のようにどこかに物理的な取引所があるわけではなく、金融機関同士が相対で取引をしている場を指します。日本時間朝5時頃にニュージーランドのウェリントンで取引が始まり、シドニー、東京、シンガポール、ドバイ、ロンドン、ニューヨークと次第に取引の中心は東から西へと移っていきます。ニューヨークは日本時間で21時頃から翌朝6時ころまで取引が行われていますので、24時間、世界のどこかで取引されていることになります。

図1

 

では、投資をする場合に、為替はどのように影響するのでしょうか。具体的に見てみましょう。

例えば米国市場で上場している「アマゾン」の株式を買うことを考えてみましょう。今、アマゾンの株価を1,700ドルとします。私たち日本人は、通常日本円を米ドルに交換してからアマゾンの株式を買うことになります。1ドル=100円とすると、1株買うのに1,700ドル必要ですから、日本円で17万円必要になります。その後、為替レートが1ドル=110円になった場合と、1ドル=90円になった場合を考えてみましょう。

図2

 

日本円換算で見ると、買った時よりも円安(円の価値が相対的に下がる)になると利益(為替差益)が出て、円高(円の価値が相対的に上がる)と損(為替差損)が出ます。これはぜひ覚えておいてください。

では為替はどんな要因で動くのでしょうか。

長期的には2国間の物価上昇率の差、中期的には貿易収支や金利の差、短期的には各種経済指標や政府要人の発言等で動きます。少し詳しくお話しましょう。

まずは長期的な要因から。「インフレ率が高い国の通貨は安くなり、よりインフレ率が低い国、あるいはデフレの国の通貨は高くなる」関係が成り立ちます。次の例でご説明します。

今、あるボールペンが米国では1本1ドルで販売されているとします。同じ商品が日本では1本100円で販売されている時、1ドルと100円は同じ価値ですので、交換レートは1ドル=100円ですね。その後10年経って米国ではインフレにより物価が上昇し、ボールペン1本1.1ドルになったとします。日本ではデフレにより物価が下がり1本90円で買えるようになったとすると、1.1ドル=ボールペン1本=90円ですから、ドルと円の交換レートは90円÷1.1ドルで、1ドル=約81.81円となります。1ドルと交換するには100円必要だったのが、約81円で交換できるようになったのだから、「円高」になったのです。

次に、中期的には貿易収支が影響します。例えば、日本の自動車メーカーが米国へ自動車を輸出すると、輸出代金は米ドルで受け取りますが、自動車メーカーは受け取った米ドルを円に交換します。この時、米ドルを売って日本円を買う取引が発生します。つまり、輸出はドル売り円買い(=円の需要↑)=円高要因となります。一方、例えば食品会社が牛肉を米国から輸入する時は、手持ちの日本円を売って米ドルに替えて輸入代金を支払います。つまり、輸入はドル買い円売り(円の需要↓)=円安要因となります。この輸出と輸入のバランスが為替相場に影響します。

また、金利の差にも影響されます。お金はより多く利息がもらえる方に動いていきます。コストや様々な要素を考慮しても米ドルの方がより稼げるとなれば、日本円を米ドルに替える動きが強くなりますし、そうでなければ逆の動きになります。

短期的には様々な要因で動いています。例えば、各種経済指標の発表や政府要人の発言、戦争や大きな災害等によっても刻一刻と動いています。最近では、トランプ大統領のツイート一つで大きく動くケースもありますね。

私たちの周りには、海外からの輸入品がたくさんあります。例えばガソリン(石油)などのエネルギーはほとんど、大豆や小麦等、食料品は6割以上を輸入に頼っています。また、洋服や医薬品なども輸入品が多いです。為替が円安になると輸入品は値上がりします。また、インフレ率が上昇してくると円の価値が下がり、長期的には円安になります。円での資産しか持っていないと、それだけ購買力が下がる事になります。まずは為替に関する正しい知識を持ち、ご自身に合った海外資産を保有することも考えていきましょう。

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